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『稲盛和夫塾長理念』その4

『人間として正しいことを、
   
            正しいままに貫く』





 京セラは、私が二十七歳のときに周囲の方々につくっていただいた

会社ですが、私は経営の素人で、その知識も経験もないため、どうす

れば経営というものがうまくいくのか、皆目見当がつきませんでした。

困り果てた私は、とにかく人間として正しいことを正しいままに貫い

ていこうと心に決めました。

 すなわち、嘘をついてはいけない、人に迷惑をかけてはいけない、

正直であれ、欲張ってはならない、自分のことばかりを考えてはなら

ないなど、だれもが子どものころ、親や先生から教わったーそして大

人になるにつれて忘れてしまうー単純な規範を、そのまま経営の指針

に据え、守るべき判断基準としたのです。

 経営について無知だったということもありますが、一般に広く浸透

しているモラルや道徳に反することをして、うまくいくことなど一つ

もあるはずがないという、これまた単純な確信があったからです。

 それは、とてもシンプルな基準でしたが、それゆえ筋の通った原理

であり、それに沿って経営をしていくことで迷いなく正しい道を歩む

ことができ、事業を成功へと導くことができたのです。

               「生き方」サンマーク出版 刊より