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稲盛和夫塾長経営理念その17

世のため人のため


 経営者は、「自分だけよければよい」というみずからの欲望や

自社の損得だけで動くのではなく、「世のため人のため」といった

高邁な精神を基軸としてビジネスを展開していかなくてはならない。

そのような「世のため人のため」という高邁な精神で経営にあたれば、

自己の利益の最大化のみを目指し、利己主義に陥った資本主義の軌道

修正も可能となり、世界経済は調和ある発展を今後も持続できるに

違いない。



 わたし自身の人生を振り返るとき、そのことを強く実感する。

 京セラを創業したときに「みんな一致団結して世のため人のために

なることを成し遂げたい」と誓詞血判した。そして、ファインセラ

ミックスの研究に没頭し、経営と格闘してきた。

 また、「動機善なりや、私心なかりしか」とみずから問うた後に

第二電電(現KDDI)を設立し、「世のため人のため」という思いを

原動力に事業にあたってきた。

 さらに日本航空の再建についても、勝算もないなかで、ただ

「世のため人のため」になればと、これを引き受け、真摯に経営に

取り組んできた。いずれも「世のため人のため」という精神を貫いて

きたからこそ、事業を成功に導くことができたと考えている。

 そのような半世紀以上にわたる自身の経営の歩みを振り返るとき、

経営者にとって最も必要なのは、「世のため人のため」という高邁な

精神をベースにもち、「燃える闘魂」をいかんなく発揮することである

ことを強く思う。

そうしてこそ、ビジネスを通じて、より良い社会を築くことができるのである。


                『燃える闘魂』毎日新聞社刊より