すむ世界を変える

 同じ業界にありながら、黒字と赤字というように好対照の

業績を示す企業があります。

 両社に経営努力や従業員の働きの点で、大きな違いがある

わけではありません。いずれの企業でも懸命に努力をしてい

ます。しかし、赤字企業が黒字企業と同じ努力を続けていては、

いつまでも現状を打破することはできません。

 赤字企業は、一気呵成にたいへんな努力を払う必要がある

のです。例えば、黒字企業の何倍ものコストダウンに集中的

に取り組むことで、黒字化を果たし、競合企業をキャッチア

ップすることができます。このように、一気に現状改革をは

かることを「すむ世界を変える」というのです。


               京セラフィロソフィ?より

利他は現代の処方箋


 現代の世相の乱れを、個人の欲が過剰なために起こっている

問題だと考えると、解決策は出てきます。各人が欲を少しずつ

削って自分が損をする覚悟をすれば、また他人に自分の利を

譲り与える勇気さえあれば、すべてはうまくいくはずです。

しかし、それを行うのが実に難しい。

西郷(隆盛)はそのことを知って、なおかつ我々に「欲を

離れなさい」というのです。

 欲を離れること、誠を貫くこと、人に尽くすこと。

それこそ、病める現代の処方箋です。これは人間が正しく

生きていくための哲学であり、真の道徳といえます。



 『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』日経BP社より

フィロソフィにつかる


 フィロソフィを体得すりには、日々、どのような判断をすべきかを

考える習慣を身につける以外に方法はありません。

フィロソフィ手帳も、ただ携帯しているだけでは無意味で、機会ある

ごとに繰り返し読まなければ意味がありません。

 常に自分が「フィロソフィにつかっている」という状況が大切なの

です。

 私の自宅のベッドや机の周りには常に、宗教や哲学に関する書物が

何十冊と積んであります。思い立った時には、いつでもそれを手に

取って読む。そうして、私は自分を常にフィロソフィの中につからせ

ているわけです。そのように、常にフィロソフィにつかっているとい

う状態を維持していかなければ、実際に判断する際、常識にとらわれ

ないで、物事の本質を見て判断するということはできません。


       京セラ社内報「敬天愛人」第152号(1994年8月)より

【魂を込めて語りかける】


 人に自分の思いを伝えたいと思えば、真剣に魂を込め、一生懸命に

話をすることです。

 巧みな話術でとうとうと、うわべだけの話をしても「思い」は

伝わらないものです。

 それよりは、トツトツとした語り口でもいいから、魂からほとばし

り出た言葉で話すことが大切なのです。

後でぐったりと疲れてしまうくらい、全身全霊を傾け、訴え続けるの

です。そうすると、言葉とともに、その言葉を越えた強烈な「思い」

が相手に届き、その心を動かしていくはずです。

 「何としてもやり遂げたい」という自らの強烈な思いと同じくらい

にまで周囲の士気を高めることができれば、仕事は必ずうまくいくは

ずです。

素晴らしい生き方と経営に努める


 盛和塾とは詰まるところ、企業経営を成功へと導き、それを長く

持続させるための原理原則を学ぶところである。

ただ、その原理原則が、世間一般の経営常識とは異なり、人間と

しての心の持ち方なのである。

 「人生はどのようなものなのか」「人生をいかに生きるべきか」

ということを自分自身に問い、心を高めることに努める。

またそのことを通じ、経営を伸ばしていく。たった一回しかない

人生を、そのようにして、素晴らしい生き方と経営に努めることを

通じて、従業員やその家族はもちろん、社会のため、さらには地球

のために貢献する。

 それは「一隅を照らす」ということであろう。たとえどんなに

小さな企業でも構わない。その経営を通じ、世のため人のために

尽くし、自分が生きている価値を、この地球上に残して死ぬべき

だろうと、私は考える。


    『新版・敬天愛人 ゼロからの挑戦』PHP研究所刊より